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音楽について

音楽業界の業務・会計・税務Q&A

1. 音楽業界の会計の注意点はなんですか

音楽業界のビジネスは大きく分けると、(1)権利ビジネス(2)役務提供ビジネスに区分することができます。会社の収益構造や費用構造を理解・分析するためにも、その異なるごとの区分が大切です。もっと言えば、なんの権利なのか、なんの役務なのか等の詳細に区分する必要があります。その区分ができていない会社は、自社の強みや弱点を把握できないために、経営戦略がずれてしまいます。その区分に基づく会計や経理処理が必要です。 また、原価と販売管理費の区分が大変難しいですね。会計士や税理士によっても役務提供原価の考え方は異なるので、経営者の考え方と顧問税理士等との考え方を一致させることが大切です。例えば経営者は宣伝費を原価と捉えているのに顧問税理士は販売費と捉えていたりします。双方間違いではないのですが・・・いかがなものでしょうか。

2. 音楽業界の税務の注意点はなんですか

個別に見れば各社ごとに異なる問題は存在しますが、業界全体としては大きくは3つの問題点が存在し次のQで説明します。

3. 収益計上時期(税務上の課題1)

どの会社でも問題になるのが収益計上時期です。収益は、原則として発生主義により計上しますが、音楽業界では発生主義では計上できないものも多数あります。例えば印税、ファンクラブ会費、TV出演料などです。税務調査は後から来ますから、翌年度の帳簿をみて、これは前期分だと指摘しますが、すべて鵜呑みにしてはいけません。自分たちの基準を明確に持つことです。

4. 原盤権の償却(税務上の課題2)

次に、原盤権などの処理の特殊性です。法人税法では、原盤は2年で償却となっていますが、実際には一括損金で計上したり、商品棚卸に配賦したりします。これらはまったく規定上は存在しませんが、業界と国税当局が話し合った結果認められた方法です。

5. 原価の範囲(税務上の課題3)

原盤の制作途中で決算を迎えた場合には、仕掛原盤の把握をしなければなりません。この場合にどこまでが、原価として参入しなければならないのかという課題です。スタジオ代、演奏料、ミキサー料など直接かかる費用はすぐに解るとして、交通費、通信費、資料費、ケータリングなど間接的な経費の取り扱いに関して、意見の分かれるところです。原価の範囲が各社ばらばらです。業界は製造業ではないため、明確な原価計算制度がないために起こる不思議な事象です。これは、他の役務に関しても同様なので、自社の基準を明確に持たないと税務調査で大変面倒なことが起きます。

6. レコード会社がどんどん変化していますが会計は変わらないのでしょうか

レコード会社は、従来盤をプレスして販売するというビジネスモデルが一般的でした。会計としては製造業の会計を採用していれば良かったのです。この場合では、製造コスト、販売コスト、宣伝コスト、原盤コスト等の自社の部門別・商品別のコスト管理を行い、損益分岐点の管理を行い、言い換えれば変動費と固定費の分析を行えば収益の管理ができました。近年は、自社で盤の製造をしていないこと、盤の売り上げが低下し、配信や二次使用の割合が高くなり、大手のレコード会社でも配信収入が50%を超えるようになってきました。これはどちらかと言えば、サービス業に近い業種に変換がされてきたという事です。会計の体制も従前のままでいいわけがありません。従来から行われている経理処理にとらわれ、無駄な作業など行っていないか点検も必要でしょう。

7. 音楽出版社の仕事は本の出版ではないのですか

音楽出版社の仕事は、音楽著作権の管理とプロモーションです。管理とは楽曲の使用許諾をしたり、印税の分配を行ったりすることです。名称の由来はその名の通りで、18世紀に楽譜の貸出業から始まり、19世紀に楽譜の出版業として確立してきました。当然に今でもKMP、ドレミ楽譜出版などは、その名の通り楽譜の出版を行っています。
いまの音楽出版社は、概ね放送局系、レコード会社系、プロダクション系に区分ができます。それぞれ強みと弱点を抱えています。例えば放送局系は番組というメディアを持っていますから、メディアプロモーションが大変効果的です。プロダクション系は、アーティストを抱えていますからアーティストプロモーションが得意です。それぞれの強みと弱点をカバーするために、共同出版契約が生み出されました。音楽著作権は、権利としては死後50年もの間保護されますから、時代を超えて歌い継がれる楽曲は、音楽出版社の大きなビジネスとなっています。

8. 音楽プロダクションの会計は難しいと聞きましたが

音楽業界の中で一番複雑な会計が音楽プロダクションです。Q1でも書いていますが権利ビジネスと役務ビジネスがたくさん混在しているからです。弊社がプロダクションの顧問を新規で受ける時に感じるのが、仕事の中身を理解しないで経理処理をしているなぁということです。例えば印税って言っても思いつくだけで5種類ぐらい浮かびます。科目としては集約することも必要ですが、内容を理解していないため、収益と原価がまったく対応していないものを見受けます。役務に至っては、TVラジオ出演、ライブコンサート、ファンクラブ、物販など多彩な業務が混在しています。これらを企業会計の考え方で処理をしていては、経営の判断を誤ることになります。経営に役立つ管理会計の考えを取り入れていく必要があります。

9. 音楽プロダクションですが経理がすぐに辞めてしまいます原因はなんでしょうか

いくつか原因が考えられます。一つは、プロダクションの業務は多岐にわたるため、従来経理経験者でもまったく想像がつかない出来事がたくさんあります。これらを指導できる体制がないことです。経理の担当者は、総じて先の見えない業務に不安を感じます。経理は比較的先が見える業務であるということを理解しないといけません。特に資金繰りに要注意です。それからもう一つ、経理責任者や社長の考えと自分の考えが異なると感じた時にやめる傾向があります。不安にさせない指導が必要です。

10. コンサート制作会社ですが収益計上時期がわかりません

コンサートの企画運営を取り仕切るのがコンサート制作会社です。コンサートの仕事ほど分業化が見事に行われている業種も珍しいです。これは仕事が専門家ではないと行うことができないという事です。それらを束ねる制作会社は、会計税務で大きな課題を抱えています。それは、収益計上時期の問題です。基本的にコンサートの終了により売上げが確定することは標準的な考えです。しかしながら、コンサートツアーと言われるものは、長い時では、3か月・半年と続きます。この最中に決算期を迎えた場合にどうしたら良いか。その判断基準は、契約の仕方、収入の計算方法、費用の計算方法など、複雑な考えをまとめて税務調査にも耐えうるようなきちんとした考えを持つことです。内容は個別に判断をしていきます。

11. コンサートプロモーターですが決算に締めが間に合いません

コンサートプロモーターは、コンサートのチケット販売、会場設営、当日運営などを担当しますが、コンサート終了後における精算事務は大変です。大きな会場などで行うと精算終了まで3か月、4か月かかることはざらにあります。一般的には原価の集計が終了しないパターンが多いだろうと想像がつきます。このような場合には、原価について、見積原価を計上します。見積原価と実際原価の差は、翌期で調整をします。私どもでは、このようなことが無いように、精算制度を標準化して、担当者以外でも精算ができる制度を指導しています。

12. コンサート制作会社ですが、打ち上げ代が1ツアーに何度も出ますが、税務当局から交際費と言われています。納得がいきません

まずは、打ち上げとは何でしょうか?ツアー中に行う打ち上げの内容を分析把握する必要があります。現場での親睦を深めるための飲み会・食事会であれば、当然に交際費になります。交際費にならないためには、少額であることや、交際費でないことを証明できる内容のものを保管、管理する必要があります。

13. 変動所得(印税)の平均課税制度はどのような制度ですか

作詞作曲家の方は一般的に個人事業者が多いものと思われます。収入の多くは、著作権印税が想定できます。私が見る範囲では、作家以外に演奏家、実演家又はアレンジャーだったりする方が多いでしょう。個人が受ける印税は、平均課税の特例という大変有利な規定の適用を受けることができます。収入が急激に増加した場合に大幅な課税に至らないようにする制度です。ただ、すべての印税がこの適用を受けられるわけではないので注意が必要です。

14. アーティスト・歌手・演奏家の確定申告

これらの方たちは、特殊な業務のため特殊な経費が認められます。例えば、衣裳代、美粧代、ライブ鑑賞代など私たちサラリーマンには絶対に認められない経費です。その他、作詞作曲のための旅費なども認められます。これらの特殊な業界では、その税務専門家も少ないと思われます。